相良宗介
相良宗介(さがら そうすけ)は、賀東招二の小説『フルメタル・パニック!』に登場する架空の人物であり、同作品の主人公である。アニメ及びCDドラマにおける声優はそれぞれ関智一と森久保祥太郎。
人物
ミスリル作戦部西太平洋戦隊陸戦コマンドSRT(特別対応班)所属。階級は軍曹。コールサインは"ウルズ7"。認識番号はB-3128。
世界各地の戦場を廻ってきた凄腕の傭兵。専門分野は偵察作戦とサボタージュ、ASの操縦。この内、ASの操縦にかけては自ら「専門家(スペシャリスト)」を名乗り、それに違わぬ実力を持っている。陣代高校生徒会では「安全保障問題担当・生徒会長補佐官」、同2年4組では「ゴミ係兼カサ係」を任されている。傭兵やゲリラとしての経験が長いため、平和な社会での常識は皆無で、常に戦場の常識に則り行動する。別名、「戦争ボケ男」。
その性格は、同僚のクルツやマオ曰く「ネクラ・朴念仁・唐変木」。野性的な本能に忠実で、直感によって行動する。従って、彼の行動はむしろ野生動物(特にイヌ科)のそれに近いところがある(故に、後述する犬ソースケが誕生した)。常時臨戦態勢で生活し、東京にあってもそれは変わらず、基本的に寝る時はベッドの下で寝る。また、目を開けたまま眠れるという特技を持つ。
物騒な発言や行動などが目立つが、カリーニンに言わせると「幼いころの彼は限りなく善に近い存在として生まれてきたように見える」とのことである。また「彼は争いや戦いを恐れている節があった」と語っている事からも、これらの言動は特殊機関の後天的な影響によるものと考えられる。作者も日本で普通に育っていたら善良な人間(ちょっと善良なオタクと発言した事もある)になっていただろうと語っている。
趣味は釣りと読書(主にジェーン年鑑などのミリタリー関係の技術書と専門誌を愛読)。また、戦場育ちではあるが、落ち物パズルゲーム(テトリスやコラムス等)に関しては、部隊内でもトップクラスの腕と自称する(アニメ版「女神の来日(温泉編)」において、クルツ達が覗きの相談をしている横で黙々と落ち物ゲームをやっている描写がある。スーパーファミコンらしきゲーム機を難なく操作していたが、いつテレビゲームの操作を覚えたのかは謎)。逆に言えばそれ以外のゲームを知らない。インターネットゲーム「ドラゴン・オンライン」を落ち物パズルゲームと勘違いしたこともある。他、球技大会の際、ウノとカード麻雀のルールを完璧にマスターしている。スポーツのルールに関する知識はないようで、球技大会ではソフトボールの試合で地雷を使用しようとしたり、ラグビーでは「キック(パント)」の解釈を勘違いして相手の顔面に蹴りを入れたことがある。
少年期の大半をアフガニスタンという多民族地帯で過ごしたため、話せる言語は確認できたうちでも日本語、英語、ロシア語、アフガン方言でのペルシャ語、ウルドゥー語と実に幅広い。簡単な会話程度ならスペイン語も扱える。逆に日本文化との接点に欠けるため古文・日本史が苦手で、日本語自体も相手の質問に「肯定だ(アファーマティブ)」と答えるなど、若干肩肘を張った感がある。ただしこれは、彼に日本語を教えた人物であるカリーニンの影響によるところが大きい。
上記の通り、アフガニスタンで育ったこともあって、彼は一応イスラム教徒である。しかし、断食月のことを気にしてはいるが、豚肉を何の抵抗も無く食べるなど、ほとんど戒律は守っていない(本人曰く、コーランの暗誦は出来る)。そもそも彼の場合、宗教に関する意識自体が希薄であり、クリスマスも『敵兵の警戒が弱まってくる境目の時期』という認識でしかない。ちなみにこれは、アフガニスタン時代にソ連兵と戦っていた経験から。
コッペパン、干し肉、カロリーメイトのフルーツ味が好物らしいが、それ以外の食べ物を良く理解していない節がある。しかしカリーニンのボルシチ(ココアと味噌を隠し味に加えている)には閉口した模様。また、かなめに夕飯を作ってもらうはずがそれが破談になった時は最後まで未練を見せていた。なお、陣代高校での昼食はトマトと干し肉で済ませることが多い(ただし、メリダ島の食堂でもこれを食しているシーンがある)。酒は「アルコールは脳細胞を破壊する」という考えを持っているために嫌っている。作中では長編『終わるデイ・バイ・デイ』と短編『ミイラとりのドランカー』で飲酒しているシーンがある。なお、長編『つどうメイク・マイ・デイ』において、長編『燃えるワン・マン・フォース』で負った重傷のために肝臓の一部を切り取っており、飲酒が出来ない身体になった。
左頬にX字の傷跡があるが、これがいつ付いたものであるかは不明である。ただし、原作においてはアフガニスタン時代のイラストでは傷が付いていない(アニメ版フルメタル・パニック! The Second Raidでは、ガウルンの回想で初めて宗介と出会った時には既にX字傷が付いていた)。髪は普段、自分でナイフを使って適当に切っているためボサボサ。床屋や美容院では「他人に刃物を突き付けられる」という状況が耐え難いらしい。
月刊ドラゴンマガジンにて、誕生日が1984年7月7日と記載された(アニメ版無印第一話には、住民票に1983年7月7日と表記)。旅客機墜落事故の際は平仮名の名前(本人のものかも未確定)しか分からなかったので、宗介が自分の誕生日を知っているわけはない。作者曰く、コールサインから自分で設定したとしている。
なお、本作を扱った各種パロディ作品では、よく犬に例えられる(一巻でかなめが宗介を「野良犬」に喩えたため)。一例として作者である賀東招二と親交のある漫画家井上よしひさの漫画作品『おじいちゃんは少年探偵』に出て来る傭兵犬「ソース」のモデル。また、本作のイラストを担当する四季童子自身による「犬ソースケ」というキャラクターも存在する。
生い立ち
幼少期、母親(発見された際、もう1人すでに死亡していた男性がいたが、それが父親であるかどうかは実は明確にされていない)と共に旅客機の墜落事故に遭い、宗介1人が生存者としてソ連海軍の潜水艦に救助される。事故の詳細を唯一握っていたソ連が沈黙を守ったため、この事故は公式には生存者無しと発表されている(従って、宗介の戸籍は存在しない)。また、「相良宗介」という名前は、その際に身につけていた服のタグに書かれていた「さがらそうすけ」にカリーニンが当てたもの。ただしこのよみがなもカリーニンが飛行機の乗客名簿を調べたとき『さがら』という苗字がなかったことから、彼の本名かどうかは不明。
その後、ソ連の特殊機関"ナージャ"に暗殺者として育てられ、“バダフシャンの虎”と呼ばれたゲリラ、マジード(アフマド・シャー・マスードがモデルと思われる)を暗殺するためにアフガニスタン(アニメ版ではヘルマジスタンという架空の国)に送り込まれる。しかし暗殺に失敗し、逆にカシムとしてゲリラの一員となる。なおその際、スペツナズの指揮官だったカリーニンに敗北を喫した事がある。ゲリラ組織壊滅後は再びカリーニンと行動を共にしていたが、ある時を境に別れ、各地の戦場を流れた後、ベリーズにあるミスリル訓練キャンプから西太平洋戦隊にスカウトされる。
本編における行動
『戦うボーイ・ミーツ・ガール』から『つづくオン・マイ・オウン』の間、千鳥かなめの護衛任務を受けて都立陣代高校に通うことになる(護衛任務自体は『終わるデイ・バイ・デイ』で解かれている)。しかし、その経歴ゆえに現代日本の常識という物が全く欠落しており、壮絶なるカン違いにより校内を混乱に巻き込むこともしばしばで、発砲・爆破騒ぎも一度や二度ではない。その行為は間違いなく銃刀法及び火薬類取締法に抵触しているが、何故か一度も罪に問われたことは無い。なお通学中に愛用する拳銃は小型携帯性と装弾数の多いグロック19(後にG34へと変更)。
作中、アーバレストとそのAIのアルにはじめは嫌悪感や不信(原理の明らかでない兵器であるラムダドライバや、高性能なワンオフ機であるアーバレストの兵器としての信頼性の無さ)を募らせていくが、『終わるデイ・バイ・デイ』で自身が「弱い」と認識したことやアルにフラグが立ったなどの環境の変化によってラムダ・ドライバをほぼ完全に自分の意思で発動できるようになる。同時にアルに対しても信頼するようになる。
『つづくオン・マイ・オウン』においてアマルガムによってミスリルが壊滅し、自身も愛機となったアーバレストを破壊されるが、さらわれた千鳥かなめを取り戻すためにたった一人でも戦い続けることを決意した。組織的なバックアップを受けられなくなった後の『燃えるワン・マン・フォース』では単独でアマルガムを追い、東南アジアの都市“ナムサク”へと向かう。その後成り行きでAS闘技場のチーム“クロスボウ”の専属搭乗員となり、この際にナミやレモンと出会う。その後アマルガムの尻尾を掴みかけるが、その時の戦闘でナミが射殺され、自らも重傷を負う。
『つどうメイク・マイ・デイ』においてはDGSEのエージェントであったレモンと行動を共にし、リハビリに励みながらもアマルガムを追い続ける。そして、レモンの助力もありついにレナードの潜伏先を発見するが、一足先に米軍の特殊部隊(デルタ・フォースの強襲機兵チームのM9部隊)とミスタ・Auが派遣したAS部隊によるレナード邸への攻撃と、それらの迎撃に出たレナード側にカリーニンがいた事による動揺もあって、一足違いでかなめと直接再会することはできなかった。しかし、新型ASARX-8 レーバテインに搭載されていたアルやメリダ島を脱出したクルツやマオ、テッサ達と再会した事と(通信機ごしとはいえ)かなめと会話した事で、かなめ奪還への闘志を新たに燃やす。
ちなみに、本編とはまったく関係ない短編『シンデレラ・パニック!』(短編集1巻に収録)では、シンデレラに登場する魔法使いに扮した。極秘の魔法使い協会「ミスリル」から恵まれない人々の多角的支援のため派遣されたとのこと。このエピソードで宗介は魔法のパンツァーファウストを用いてシンデレラ(千鳥かなめ)を舞踏会に参加させ、脱出支援を行った後、次の任務のため西へと旅立っている(なお、宗介は下士官の魔法使いなので、テレポートなどの高尚な魔法は使えないらしい)。買い物リストに手榴弾やアサルトライフルが書かれていたり、都市迷彩のローブを身にまとっていたり、偽造招待状無しに場内へ潜入しシンデレラの支援工作を行うなど、ファンタジーな世界観の中でも戦争ボケぶりを発揮し、異様な存在となっている。
搭乗機
このほか、作中で直接描写されていないものの、ミストラル2をはじめとする他のASにも搭乗した経験があると語っている。